In London

今回の挑戦は残念な結果だった。
アンラッキーだと励まされたけど、自分的にはいろいろと考えさせられたし、
とにかく悔しかった。

まずアンラッキーだったことは、フロアが2つあって、
俺はセカンドフロアでDJプレミアと同じ時間だったこと。

当たり前だけどプレミアのプレイが始まったら、セカンドフロアに居た人が続々とメインフロアに行ってしまった。メインフロアが混み過ぎて、セカンドフロアに少しは人が流れて来るかと思ったけど、踊りに来てるんじゃなくてそもそもみんなプレミア見に来てんだからそんなわけなかった。

加えて左のターンテーブルのアームの調子が悪くて、普通の音量で針飛びしまくる。
針を変えてもセッティングをいくらいじっても最後まで直らず、途中からは頭出しもほとんどできない、ミックスしてる最中に針が飛んじゃって繋げない、おまけに勝手にループし始めると、やりたいことが何も出来ずに収集がつかなくなった。

フロアから少しずつ人がいなくなる中で、やりたいことも出来ずにさらに人が減っていく。
この悪循環の流れを変えようにも何をかけても反応が薄い。俺の前のDJがヒップハウスをかけててマジかよと思ったけど、それで踊ってた人ですら俺がかけるヒップホップでは反応が薄い。

ネタものはさらに反応が悪く、サルソウル系で少し持ち直すも、この辺りからターンテーブルが本格的におかしくなって、勝手にループしたり、針が飛びまくったりで場が完全にしらけちゃった。

後は人がメインフロアに移動していくのを眺めながら、早く終わってくれと思いつつフェードアウトフェードインで自分が好きなソウルとファンクをかけてフィニッシュ。

自分の時間が終わった後に、30分くらい押して始まったらしくやや時間がずれてたプレミアのDJをVIP席から少し見れた。

一曲かけたら、マイクで煽るかスクラッチで煽ってから次の曲へ。
きっとプレミアだから成立する一つの完成形なんだなぁと思いながらも、自分が目指す形はこれじゃないと思った。もうこれはDJというよりショーケースだなと。

ただその時は落ち込みのほうがひどくて、そんな考えは負け惜しみっぽいし、
とにかく今回は自分の実力がなかっただけだと自分に言い聞かせた。
あまりにも自分が描いていたイメージとかけ離れた結果を受け入れ難かった。

結局ほとんど眠れずに、朝から公園でいろいろと考えた。セッティングについては、しっかりとリハをしなかったのが悪い。特にみんなセラートだったから、アナログのセッティングは慎重にやらないといけなかった。

次に自分が目指すDJの完成形について考えてみた。
そこで気づいたことは、自分の曲作りとDJのベクトルが少しずつ乖離していた事を騙し騙しやっていたなと。

曲作りとしては、本当はラップが乗った王道のヒップホップを作りたいんだけど、タイミング的に今はセールスが厳しい。本当に作りたいものが一般的に評価される為に、まずは評価される環境を作らないといけない。

昔はアナログのヒットがその環境を作ってCDのセールスに結び付くこともあったけど、今は状況がだいぶ変わってアナログもCDも売れないからどこから攻めて行けばいいのか正直わからない。

今はどう配信に繋げるかなんだろうなぁとは思えば思うほど、
正直なところラップが乗るヒップホップから攻めるのは難しいと思ってしまう。

そんな思いもあって、今の自分のDJにフィットするBPMが速めのヒップホップ的な作りのインスト曲で、ファンクやソウルへと繋げる曲を作ってた。

でも作ってる最中にやっぱりラップを乗せたい葛藤もあったりして、速やかに制作が進まなかったけど、今回のイベントに出た結果として、曲作りの方向性は自分にとってベストな選択なんだなと改めて思えた。

自分の考えるDJの完成形は、過去と未来を行き来し、旧譜と新譜がお互いを引き立て合うような流れを作ること。これについては今でもブレはない。そこに自分の曲がピークのくるように織り交ぜることで分かり易さとライブ感を強める。

自分がヒップホップから入って、そのネタとなるソウルやファンクやジャズに興味を持って、たくさんの素晴らしい曲に出会えたその感動を、DJプレイという違った形で再現できるような流れをいつも意識している。

その中で元々リンクしてたはずの曲作りとDJプレイに乖離が生じたと思い始めたのは、一昨年くらいからだと思う。

新譜でかけたいと思うヒップホップの曲が減ってきて、そもそも自分の曲もそんなにかけなくなって、バランスが少しずつ悪くなってるのをわかっていながら、流れと言うよりも曲の破壊力に頼ってその場凌ぎのパワープレイで誤魔化していたと思う。

今回のイベントのために作ったミックスはバランスが取れていて、理想的な形に出来ている。

でもDJプレイとなるとお客さんの反応がリアルタイムなこともあるから、反応が薄い曲、特に聞き慣れていないだろう新譜のヒップホップはかなり反応が厳しいことが多いから自然とかける回数が減ってくる。

本当は強い意思を持ってかけ続けないといけないんだけど、そこまで愛情を持てる曲はやはり少ない。

そこを打破出来るヒット曲を自分も含めて作っていかないと、いつまで経っても90年代から先に進めずに、今頑張って一定のクオリティの作品をリリースしてる人達が報われないまま衰退していくだけなんじゃないかと。

ここが海外でも集客力がすごいハウスやテクノとかとヒップホップの大きな違いなんじゃないかと思う。今たいした作品も出してない人達が、このまま持ち上げられ続けてまともな未来があるとは思えない。

だからこそ、世代交代も含めて今の悪い流れを断ち切るには、ヒップホップというベースは残しつつも、少し違った形で一人でも多くの人に聴いて貰える、それでいて踊れる強烈なヒット曲を作ることで、90年代ではなく10年代と言われるくらいの流れを作るしかないと言うのが自分にとっての結論だった。

自分なりに頑張り続けて、なかなか経験出来ないようなことも経験出来て、
なんとなく上手くいってると思ってたけど、そうでもなかったと気付かされた。

いつの間にか勝手に変な使命感を持って、意地でもラップを乗せた楽曲を作り続けないとと思ってたけど、もっと長い目で見て、本当に作りたい曲を聴いてもらえる環境作りからやり直さないといけないなと。

難しいことを考えずに、好きな曲だけ作ってればいいと言う人も居るかもしれないし、DJは楽しければいいと言う人も居ると思う。でもそれじゃあ続かないし、クオリティが上がらない。

俺はもっとHIPHOPがカッコいいと思ってもらえる曲が作りたいし、DJだって盛り上げればいいんじゃなくて、あくまで自分の理想の形で盛り上げたい。

今から約5年前、レコードを送った事がきっかけでお世話になってるBreakin’ Breadには本当に感謝。Skegとも5年越し対面。ロンドンでご飯も御馳走になり、いろいろなところへ連れてってくれて嬉しかった。これからどういう曲を作っていくかの話も出来たし、直接会った事でもっと恩返しがしたいなと思った。

withSkeg

DJもうまくいけば良かったのかも知れないけれど、
深く考えるきっかけになったし、いろんなことが気付けたことは成功するよりも良かったと思う。

もう一つ良かった事は、自分と同じように大好きな事を成し遂げる為にリスクを負って挑戦をしてる人に会い、沢山話を聞いてもらいながら今の環境ややろうとしている事を理解してもらう事で、自分の目標に対してこれからどうしていくべきなのかをしっかりと整理出来たことだと思う。本当に助けられたし有り難かった。

決して大成功ではなかったロンドンだったけど、日本では絶対に得られないものは得たと思うし、もっと成長して結果をだして、またロンドンへリベンジしに行きたい。

一応観光もして来たんで、そんな写真や話はまた今度!
帰りの飛行機の11時間フライトで書いた長文でした。